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各論1:統一協会

キリスト教系のカルトの中で、統一協会ほどマスコミをにぎわせてきたところはないでしょう。これほど騒がれてもなお統一協会に入り込む若者は後を絶ちません。家族は、自分の身内が統一協会に入ってしまってはじめて、この宗教の本当の怖さを思い知るということが多いようです。騒がれた割には人々の理解が浅いものでとどまっていることが多いのかもしれません。より多くの方にその実態を正確につかんでいただくことが必要かと思います。ここでは、その手がかりとなるような基本的な情報を提供させて頂きます。

 

 

第一章 統一協会とは

 

統一協会については、一時期マスコミに騒がれ続けた時期があるため、人々の間にある種のイメージが定着しているかもしれません。しかし、イメージにとどまらないでその本質をつかんでいる人がどれくらいあるかとなると、おぼつかない現状があるのではないかと思います。

まずは、歴史、教義、布教方法などについて簡単にまとめてみました。

 

第一節 歴史

 

統一協会の正式名は「世界基督教統一神霊協会」と言います。正式な略称は「統一教会」であると主張していますが、統一協会対策にあたっている人々の多くは「統一協会」という略称を用いることが多いようです。以前、彼ら自身も「統一協会」という略称を用いていたということですので、ここでは「統一協会」の呼称を用いることにします。

文鮮明(本名文龍明)は1920年、今の北朝鮮に生れました。彼は、混淫派と言われる宗教家たちとの交流を持ちつつ、自ら独自のグループを形成していったようです。「混淫派」と言われることからも予想されることですが、特に、統一協会設立前の1946年、「混淫」による「社会秩序混乱」の容疑で警察署に3ヶ月収容、48年にも、主婦との強制結婚事件を引き起こし、懲役5年の実刑に服しています。統一協会設立後の1955年にも、女性信者との姦通事件について、新聞報道で取りざたされました。

1954年、韓国のソウルで「世界基督教統一神霊協会」を正式に設立。日本には西川勝(後に離教)が1958年伝道を始めました。正式に宗教法人となったのは1964年。この頃から「親泣かせの原理運動」として社会問題化し始めます。

その後、統一協会は数え切れないほどの様々な組織を作ってその活動領域を広げていきます。全国大学原理研究会(原理研、大学生への伝道組織)、勝共連合(「勝共」[共産主義に勝つ]をめざす政治組織)、ハッピーワールド(統一協会系企業の総元締め)、世界平和教授アカデミー(大学教授たちを人脈やお金、研究の機会などを提供することによって集めて作った組織)、世界平和女性連合(チャリティーショーやバザーの名目でお金を集める団体)、天地正教(霊感商法が社会問題化したため仏教系の装いをしてインチキ商法を続けるための組織)あたりが代表的なところでしょう。

やっかいなことには、それらの組織の多くは「統一協会とは別組織」であると主張します。というのは、何か問題を起こした時に便利だからです。しかしながら、統一協会内部ではそれらが一体のものであることを当然のごとく受け止めています。どこに回されても単に部署の違いにすぎず、同じ「メシヤ」文鮮明を信じる統一協会員がそれぞれの組織で活動をしているわけです。

あるいは、世界平和教授アカデミーなどでは大学教授が名を連ねますが、よく調べもせずに巧みな勧誘に乗ってしまっているだけのことが多いようです。政治家、大学教授、有名人などを様々な形で巧みに利用するのも統一協会の特徴です。

1987年頃から霊感商法が社会問題化し、マスコミに大きく取り上げられました。その被害は総額にすると百億円単位になるようです。

1992年、93年には、合同結婚式への桜田淳子さんや山崎浩子さんの参加、その後の山崎さん脱会などを通して、マスコミの一斉報道がなされました。

 

第二節 教義

 

彼らの教義は「統一原理」と呼ばれています。

『原理講論』はこの統一原理を説明する最も基本的な文献と考えられますが、その中を覗くと「創造原理」「堕落論」「人類歴史の終末論」…といった項目が並びます。

その中には「二性性相」「授受作用」「四位基台」「創造目的」「三大祝福」「創造本然の価値」「霊的堕落と肉的堕落」「堕落性本性」「復帰摂理」「蕩減復帰」「蕩減条件」「信仰基台と実体基台」「摂理的同時性」といった聞きなれない言葉が次々に出て来ます。もちろん聖書にも全く出て来ない言葉です。これらの言葉をマスターして初めて彼らの教義が理解できるというわけです。

しかし、その詳細をここに記しても彼らの教義の中心を理解することは難しいでしょう。私なりにその中心部分をできるだけ普通の言葉で説明してみたいと思います。

1.神の創造の目的

神が被造物を創造した時、その後地上に天国ができるはずでした。アダム、エバが自分たちの責任分担を果たすことによってやがて地上天国が達成されるはずだったのです。

2.天使の堕落と人間の堕落

しかし、ここで極めてショッキングな出来事が起こります。一人の天使とエバとが淫行関係を持って堕落したのです。その天使とは、悪魔とかサタンとか呼ばれます。彼との性的関係を持ち、堕落したエバがアダムと性的関係を持つことによって、人間はサタンの子女となりました。この世界はサタンが支配する世界となり、こうして地上地獄が生まれました。

3.神の救いの計画

神はこの罪悪世界を救おうとし、各時代において救いの計画を進めて来られました。しかし、そのたびことに人間はその責任分担を果たし得ず、計画は延長されていきました。中でも重要なのは、イエスがメシヤとして現われたことでした。しかし、それも当時の人々がその責任を果たし得ず、救いの計画は失敗に終りました。

そこで、完全な救いをもたらすためにイエスが再臨のメシヤとして現われます。

4.再臨のメシヤ

文鮮明師がその人です。文師とその奥さん(韓鶴子)とは、真のご父母様です。堕落人間が真のご父母様に従い、その責任分担を果たすならば、その時初めて地上天国が回復されるのです。



聖書の教えるところとは一から十までかけ離れた内容ですが、これが彼らが本気になって信じている内容です。それを聖書の言葉を数多く引用しながら巧みに(強引に)「証明」していきます。

 

第三節 布教方法

 

段階1 ビデオセンターへの誘い

統一協会の伝道方法の実質的導入部分は、ビデオセンターでのビデオ学習です。この段階では、宗教であることを否定します。紹介のビデオ合わせて13回のビデオ受講を強力に勧められます。内容は統一原理を主たる内容とします。

このビデオ・センターに誘うための主たる方法は二つあります。一つは該当でのアンケート(路傍伝道と呼びます)。簡単なアンケートに応えてもらいながら、巧みにその場からビデオ・センターに連れていったり、一旦帰宅後電話・手紙などでしつこく勧誘します。該当でのアンケートには興味半分でも答えないことが無難です。

もう一つは、FF伝道と呼ばれるもので、統一教会員が家族(Family)、友人・知人(Friend)を個人的に誘っていく方法です。何年も会っていない昔の同級生が突然電話してきて何か集会などに誘うとなれば要注意です。

段階2 修練会とグループ講義(トレーニング)

ビデオ受講が済むと、次のポイントは「2Days(時には1Days)」の修練会です。2日間、世間から遮断された缶詰状態にされて、講義を聞きます。この段階でもまだ宗教であることを否定します。

2Daysから帰ると、ライフ(中級)トレーニング。ビデオと並行して、数名のグループで講義を受けます。楽しい雰囲気で夕食会や誕生日会などが行われます。2週間位。

次が「4Days」と呼ばれる4日間の修練会。この修練会の少し前に、再臨のメシヤとは文鮮明であること、自分たちが統一教会という名の団体であることを知らせます。4Daysに参加して終る頃には原理が正しい教えであり、文鮮明がメシヤであると確信します。

その後、新生(上級)トレーニングに参加。更に深く教理を学びます。伝道実践(路傍でのアンケート活動)が入って来ることもあるようです。21日間位。

段階3 伝道活動、経済活動、献身

ここまでの段階で、統一教会員だけの共同生活の寮(「ホーム」と呼びます)に入る(「入教する」)人もいます。

新生トレーニングが終ると、実践トレーニング。いよいよ、実際の活動が多くなってきます。路傍でのアンケート活動が主ですが、その他、「経済活動」と呼ばれるものも行います。これは、宝石、毛皮、絵画、健康食品などの展示会に誘ったり、市価よりも数倍も高い値段での訪問販売をしたりします。それは、サタン世界にあるお金(万物)を神側(統一協会側)に移す(復帰する)ということで万物復帰とも呼ばれます。40日間位。

その後、内容的にはほぼ同じ献身トレーニング。ここで「献身」の準備をします。つまりホームに入ったり会社を辞めたりすることです。

「献身」は家も職場も捨てて統一協会内部のみで生活することです。睡眠時間も削りながら体力の限界まで、ご父母様のために、地上天国実現のためにと活動を続けます。

それは、心身がぼろぼろになってだめになるまで、あるいは、まれなことではありますが、自分で間違いに気づくまで続きます。こうして多くの若者がその生涯を文氏のために捧げていきます。

 

 

第二章 統一協会のカルト性

 

統一協会がカルト性を持っていることについては、多くの方がある程度知っておられるところかと思います。しかし、その具体的なあり方となると漠然とした理解にとどまることが多いのではないでしょうか。実際に身近な人が統一教会に入ってしまったという事態になってはじめて、その実態に触れ驚く人が多いようです。ここでは改めてそのカルト性の表れを整理してみたいと思います。(総論も参照ください。)

 

1.信者本人の人格破壊

 

一般的な統一協会員の生活は、大変ハードなものです。地上天国実現という目標を掲げつつ、次々に出される新たな数字目標達成のために、睡眠時間をぎりぎりに削りながら活動を続けます。そして、より悲惨なことは、それが決して成り立ち得ない偽りの教えの上に立って行われているということです。

 

もし彼らが自分の頭で統一協会の教えを吟味することができるようであれば、至る所に相互矛盾や聖書の曲解を見つけ出し、それほど困難なく間違いを認めることができます。けれども、たとえば両親がそのような場を設けて、「どうかよく吟味してほしい」と訴えても、彼らの考える力は極度に減退しています。教えられた見方以外で物事を見てみるということができなくなっています。

 

人格破壊は人間だれしもが持っている良心の麻痺という面にも表れます。最初は心がとがめていたウソをつくこと(家族に対して、あるいは経済活動の様々な場面で)も段々気にならなくなります。以下に見るような反社会的行為も彼らの中では善として考えられてしまっています。彼らは、自分がやっていることがどれほどひどいことであるかを自覚できないのです。

 

2.信者と信者の家族との間の関係破壊

 

最初は、本人も宗教とは知らされていないこと、統一協会だと知った頃にはマインド・コントロールが効いていて本人が家族にウソをつくようになることなどから、家族が気づいた頃には完全に統一協会の教えが入ってしまっていることが多いようです。そして、その時点で家族が反対を始めると、本人は「どうして分かってくれないのか」と嘆き、更に家族が反対の姿勢を強めると、思いがけずも本人からサタン呼ばわりされ、家族は愕然とすることになります。

 

家族は最初統一協会についての断片的な知識しか持っていないことも多いのですが、資料を集め知れば知るほど「こんなところに彼(彼女)をおらせるわけにはいかない」と思います。本人を怒鳴っても殴ってもだめ、泣いて頼んでもだめ、いろいろ手を尽くしますが、彼(彼女)を助ける方法は容易には見つかりません。「この子と一緒に死んでしまいたい」と思い詰める母親もいると言います。親の方は食事をしていてもテレビを見ていても、統一協会員として反社会的行動を続ける子供のことを考えてしまう…本人の方はひたすら地上天国を目指して朝から夜遅くまで活動を続ける…そんな日々が家族の上に重くのしかかります。

 

3.信者と社会の関係破壊

 

統一協会はその反社会的活動によって知られています。霊感商法はその代表的なものでしょう。前もって病気、交通事故などの人の不幸を入念に調べ上げた上で、その人の弱みにつけ込み、言葉たくみに先祖の霊を供養するなどと嘘を並べ立てて、印鑑、高麗人参茶、壷、多宝搭などを法外な値段で売りつけます。1988年以降は「天地正教」という仏教系宗教団体を装って活動を続けています。その他、難民救援募金という名目での募金活動、様々な団体名称を名乗りつつ繰り返される戸別訪問販売、種々の展示即売会など、統一協会の金集めの手段であるにも関わらず、決して統一協会の名を出さずに行われます。

 

彼らは、サタン側のお金を天側(統一協会側)に移すのであるから、そうとは知らずに(だまされて)お金を出した人にとってもよいことがあるのだと教えられていますから、良心の呵責なしにそのような活動を続けることができるわけです。統一協会にとって不都合な働きを続ける人々に対しては、時にはテロ行為が行われたり計画されたりすることもあります。文氏のためなら、そんな行為も喜んで行うという統一協会員が多くいるのです。

 

 

主な参考文献


世界基督教統一神霊協会『原理講論』(光言社)

浅見定雄『統一協会=原理運動 その見極め方と対策』(日本基督教団出版局)

川崎経子『統一協会の素顔 その洗脳の実態と対策』(教文館)

副島嘉和、井上博明「これが統一教会の秘部だ」『文芸春秋 94年7月号』(文芸春秋社)

萩原遼『淫教のメシア文鮮明伝』(晩聲社)

クリスチャン新聞編『異端からの回心 統一協会』(いのちのことば社)

船田武雄『統一協会 教祖文鮮明氏の結婚・離婚の教えと実態』(京都聖徒教会)

統一協会問題対策連合会発行の諸チラシ

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